寺川ムラまち研究所

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 前回、「愛しの遠野ジンギスカン」をホームページにアップしてから4年が経ちました。その間、相変わらず遠野のジンギスカンを愛し、食してきました。しかし、変化もありました。前回もお話ししました、遠野ジンギスカンの特徴である「バケツジンギスカン」いわゆる店で食べるのではなく、各自で各家で準備して食べる形式でいかに美味しく食べるかを極める試行錯誤を行ってきました。今回の「その2」はその内容を詳しくお話ししようと思います。現時点での究極の遠野ジンギスカンとも言える内容になっているのではと自負しています。

1.バケツやめました!
 最初からいきなり遠野ジンギスカンの特徴はバケツジンギスカンと言っておきながら、それをやめますと言い切ってしまいます。
 遠野で戦後まもなくジンギスカンを食べるようになった発祥の店である「あんべ」さんでは当初七輪で炭火焼きだったそうです。その後今の南部鉄器の半月型のジンギスカン鍋が七輪用に開発され、さらに現在のガス用のジンギスカン鍋になっています。さらに家庭で手軽に食べられるように穴開きバケツとジンギスカン鍋、固形燃料という組合せが開発されて広く普及して現在に至っています。
 そこで、原点に帰って七輪でジンギスカン鍋をやってみました。これが美味しいのなんの。七輪用のジンギスカン鍋は、ガスや固形燃料用のものと違って、鍋のくぼみのところにスリットが入っていて油が炭の方へ落ちるようになっています。その油が燃えて煙りが肉をあぶって美味しくなります。(ちなみにガスや固形燃料用のジンギスカン鍋にはこのスリットが入っていないのですが、もしあれば油が落ちて火が消えてしまいます。)
 炭を熾すのは大変ですが、慣れれば大したことはありません。炭も出来れば火力が強く持ちの良い備長炭がお勧めです。

2.肉の厚さは限りが無い!
 前回「切り」の項目で肉は厚ければ厚い程良いと言いましたが、とはいえお店では常連になってもそんなにわがままは言えません。そこで、前回登場の笹村肉店の笹村さんの再登場です。何とか遠野ジンギスカン史上最も厚いラムの肩ロースを切って欲しいと懇願して切って頂きました。これがなかなかに高い要求だったことが後で分かりますが、とにかく笹村さんの切った史上最も厚いラムの肩ロースを持って家へ帰り、七輪で炭を熾して焼いて食ってみました。これが衝撃的な美味しさでした。肉を切った笹村さんも興味津々で付いてきて食べました。「今まで食ったジンギスカンの中で最も美味しい!」との発言でした。
 この史上最も厚いラムの肩ロース、そもそもラムは生後1年未満の子羊ですから、肩ロースも小さいものです。その小さい肩ロースから史上最も厚い肉を切り出せるのは全体の半分程のようです。つまり、肉屋さんからすると半分は余ってしまうことになり、同時に普通のお客さんがいないと効率が悪くなってしまうという訳です。そんな無理な注文ですが、本人もあの美味しさを分かってしまったが故に何とか無理を聞いてもらっています。(これ、秘密です。って今さら遅いですが、皆が注文するとまずいです。)

3.タレやめました!
 前回、遠野ジンギスカンは「タレ」と言い切っていました。しかし、これまでに述べてきた七輪に炭、遠野ジンギスカン史上最も厚いラムの肩ロースときて、肉の中は半ばレア状態、タレなど付けずにただ塩とコショウだけで、もう悶絶するほどに美味しいのです。美味しかったのです。タレからの解放です。
 そんな興奮状態が続くある日、カルディというコーヒー豆や世界の調味料などを売る店で「羊名人」という赤い袋が目に留まりました。ン?手に取って見てみると、これが羊肉用の調味料、タレではなく粉末です。即買って帰るとさっそく七輪に炭、遠野ジンギスカン史上最も厚いラムの肩ロースときて、肉の中は半ばレア状態に、この羊名人を付けて食べました。もう失神ものの美味しさです。こ、こ、これは一体どうなっているのかと、薄れる意識の中で羊名人の袋の裏、内容物を確認しました。「クミン」という文字が目に入りました。
それからは、クミンを中心としたスパイス開発の始まりです。というのも薄れる意識の中でも微かに化学調味料の味が残り、それが残念で失神に至りませんでした。(ウソ)
 そして、現時点での究極のスパイスが完成し、遠野ジンギスカン史上最も美味しいと言い切ってしまいたくなる程の遠野ジンギスカンが我が家で完成しています。

4.ビールやめてませんが・・・・
 前回、遠野ジンギスカンは「ビール」それも遠野産とれたてホップの一番搾りの生と言い切っていました。それは今でも間違いありませんが、あれから4年が経ち、年を重ねてくるとガバガバビールを飲み続けていていいのかと自問する中で前出の笹村さんから注目の発言がありました。「ラムには白ワインが合うよ。肉というととかく赤ワインと皆は言うけど、これが白ワインがいいんだよ。」
 さっそく、辛口の白ワインを冷やし、七輪に炭、遠野ジンギスカン史上最も厚いラムの肩ロースときて、肉の中は半ばレア状態に究極のスパイスを付けて食べます。そして冷えた白ワインを飲みます。
 幸せです。言葉がありません。


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